無知と言う言い訳こそを身に纏い入り込むかい、僕の内部に。
 深みとはそういうことだよ血の色の夕日じゃないだろ、罠は紫
 崩壊は緩い速度で鮮やかに朽ちる花瓶の切花の色
 浅ましきまでに欲するものならば奪ふべきかな、月は傾く
 悦楽は薄れましょう。輪廻転生なりや夜と昼とは。
 妬ましいほどの熱情感じる日汝が詩を踏みにじりたくなる
 夜桜よ汝が嘆きの証とぞ花は散る散る、吾踏みしめる
 独りよがりかとも思ふも心には帆はあれども舵なく暴走す
 血の濃さを過信したれば裏切りの色も血の色より闇の色
 罪こそを数えあげたら新しい罪が見えるよ、それも快楽
 あらゆるを拒否せむが如く閉ざされた廃屋とても記憶が住みをり
 音とびのレコードを聴く夕暮れはゆつくり悪意の色となりゆく
 言の葉よ風に攫われひらりひらり姿変へをり意味も心も
歌集 「しにかる」