詩集「ローズティーを」
 

「君を征服する」
 
 
 躊躇って躊躇って降り注ぐ雨のことを
 僕らはこれから語らなくてはいけない
 どれほどの戸惑いであっても
 どれほどの絶望であっても
 触れ合ったことだけが
 愚かにもひどく幸せなのだと告げた時
 晴れるのだと君は言う
 
 夕暮れのカフェでお茶をしよう
 お別れの言葉は奇麗に包装してから
 お互いに贈るのだ
 あとから後悔をして君の心が
 僕だけで埋め尽くされるようにと
 願いながら贈るのだ

「接吻を、ここに」
  
 
 夢という夢に問われて
 朝という朝に終えて
 鮮やかに描かれるものを
 指先で触れるその悦びを
 
 唇からあふれる言の葉の群れ
 清浄な輝きを求めながら
 暗がりの中で迷う心を包む殻
 せい、今日は君が壊しておくれ
 
 嗚呼とても不条理な絶望
 過ちも正しさも硝子の瓶で弄ぶ
 乞われて僕らは静かに寄り添う
 子供の悪戯のように鳥たちは飛ぶ
 
 過ぎ去るあらゆるものを見詰めるのはやめて
 僕らの傷跡に、今接吻を。

「ローズティーを」
 
 
 カレイドスコープは真実を得る唯一の道具
 
 僕たちの隙間に入り込む
 それを感情というのは少しだけ違うね
 
 笑みを、ここへ
 
 くるくると廻しつつ空と君との対比に
 解らなくなるまで見詰めたら
 溶け合って一つになって
 二つになって終わりを迎える
 
 それから、接吻を
 
 所有者は君じゃないだろ?
 嘘つきへの罰の証拠として喉元に烙印を
 僕たちは互いの奴隷だから
 命じて命ぜられて
 時々ごまかすたなごころの中に隠した感情を
 少しだけ明かそうか
 
 だから、抱擁を今
 
 カレイドスコープは真実をなくす唯一の方法
 
 覗き穴から見えたものを否定してから
 空に問うんだよ
 
 幾つにも分散した万華鏡の中のかさついた溜息を
 あらゆる感情を
 得てどうなる?
 
 君
 それより僕にローズティーをおくれよ

 2002/11/12 by you-ki